【初心者向け】雪山装備について

2. 初級の雪山装備について

 雪山登山を行う上で、様々な装備が求められます。ここでは、アイゼン・ピッケルを用いた本格的な登攀を伴う雪山登山ではなく、初級の山を登る上で必要な装備について説明していきたいと思います。まずは、2-1で全装備のリストを示した上で、2-2以降でそれぞれの装備について細かく説明していこうと思います。登山前のチェックリストとしてご活用いただいたり、実際にこれから装備をそろえるという方は、買い物する際にこのリストを参考にしていただければと思います。

 雪山装備については、寒さへの耐性汗をかきやすいなどの体質も人によって異なるので、他人がオススメする装備が必ずしも自分にとっての最適解であるとは限りません。現地で装備を試しながら、最終的には自分に適したものを選んでいくのが良いと思います!

2-1. 雪山装備一覧

 カテゴリ別に装備一覧をまとめました。各カテゴリの装備については、後の段落でそれぞれどんなものをそろえるべきかを詳しく説明します。説明を読んで、それぞれどんなものを用意すれば良いかを検討してみて下さい。また、核装備の初級の雪山での必要度を以下のように三段階で示しましたのでご参照ください。

◎: 必須(絶対に必要)
〇: あったほうが良い(必須ではない)
△: 初級の山であれば無くてよい

カテゴリ装備必要度
2-2. 基本の服装帽子
ネックウォーマー or バラクラバ
アウターレイヤー
ミドルレイヤー
ベースレイヤー
グローブ
スパッツ(ゲイター)
靴下
2-3. その他の装備サングラス
ストック+スノーバスケット
アイゼン・軽アイゼン・チェーンスパイク
スマートフォン(GPS)
スマホ用のタッチペン
2-4. ザックの中の持ち物日焼け止め、リップクリーム
水筒(温かい飲み物)
防寒着(追加のミドルレイヤー、ダウンなど)
エマージェンシーシート
予備の手袋
予備の靴下
救急用具
ビバーク用具
雪崩対策用具

2-2. 基本の服装

2-2-1. 頭部の装備

 雪山登山では、例えば極寒・強風の稜線を歩くときなどは、目以外の全てを覆える装備が必要となります。頭部を露出していると体温を奪われるばかりか、顔面(特に、鼻、耳、頬)が凍傷になってしまうこともあります。

 本格的な冬山登山などで、長時間稜線を歩くようなケースでは、バラクラバ(目出し帽)が最も有利ですが、サークルで紹介する初級のスノーハイクでは強風が吹くルートを長時間歩くことは少ないので、「帽子+ネックウォーマー」の組み合わせで十分だと思います。バラクラバで口元を覆っていると、サングラスや眼鏡が曇りやすい、という欠点もあります。

 冬用の帽子については、耳当て付きのキャップビーニーニット帽など数多く種類があります。初級レベルの雪山であれば、保温性が高く、吸汗速乾性の高いもの(化繊、ウール製)であれば、基本的には何でも構いませんので、好みで選ぶと良いと思います。個人的には、ボンボンなどの突起物がついたニットやキャップ付きの帽子だと強風で飛ばされたりしやすいので、シンプルなニット帽がオススメです。

 ネックウォーマーについては、帽子と同じく、保温性が高く、吸汗速乾性が高いもの(化繊、ウール製)を選びましょう。また、ドローコード付きのものだと、隙間を少なくすることができるので良いです。

2-2-2. 服装

 雪山登山の服装に求められる機能は、次の4つです。

 ①防風、防雪、防水
 ②防寒(保温)
 ③吸汗、吸湿
 ④身体の保護

 雪山登山では、基本的に「ベースレイヤー+ミドルレイヤー+アウターシェル」の3種類のウェアの重ね着(レイヤリング)によって、これらの機能を持たせるようにしています。以下で、これらのウェアの特徴とどんなものを選べばよいかを説明します。

【ベースレイヤー】

 雪山登山では、雪や雨だけでなく、自分の汗による「濡れ」も大敵となります。体が濡れた状態で長時間滞留すると、体を冷やしてしまい、低体温症の危険性が増します。ベースレイヤーは、この汗による「濡れ」を防止する役割を担います(③吸汗、吸湿)。

 ベースレイヤーとしてふさわしい素材は、メリノウール化繊これらのハイブリッド製品のいずれかです。厚みについては、冬山であれば、中厚手~厚手のものを選ぶと良いと思います。

【コラム】ウールと化繊の違い(クリックして展開)

 化繊素材は繊維自体が水分を含まないので、高い速乾性を持つことが特徴です。フリースなどにも使われるポリエステル系の素材が良く使われています。人によっては、着用感の点で、ウールなどの天然素材と比べると違和感があり、肌に合わないという人もいるようです(着用感についても年々改良されているようです)。

 ウール素材の中でもアウトドア用品として良く使われているのがメリノウールです。ウール素材は、繊維自体が水分をよく吸うため、吸汗性、吸湿性に優れています。化繊のように速乾性ではありませんが、ウールは吸湿すると発熱する性質を持っており、さらにこの熱を外に逃さない構造をしています。そのため、多少濡れていても温かく、保温性に優れています。

 化繊にウールを混紡したハイブリッド素材の製品もあります。肌側には水分を含まない化繊、外側にはウール、という構造となっており、それぞれの素材の弱点を補うような作りになっているものが多いようです。

 私はmont-bellの化繊素材のジオラインの中厚手~厚手をベースレイヤーとして良く使用しています(上下合わせて1万円程度)。軽めの行程の雪山の場合は中厚手、テント・雪洞泊で行くような本格雪山の時は厚手のものを使用するようにしています。最近では、ワークマンでもメリノウール・化繊素材のインナーを取り扱っており、それを着用して雪山登山に行く人も多いです。初級の雪山であれば、特に登山用のものにこだわらずに安価で済ませても良いと思います。

mont-bellのジオライン(厚手、上下)

※ちなみに、ヒートテックを着用するのは絶対にやめましょう。一見すると、動くと素材が発熱するので温かそうですが、速乾性に優れていないので、かいた汗を外に逃がすことができず、体が汗冷えしてしまいます。

【ミドルレイヤー】

 ミドルレイヤーに必要な機能は、第一に②防寒(保温)性で、それに次いで③吸汗、吸湿速乾性です。そのため、基本的に素材には、ベースレイヤーとほぼ同じ機能が要求されます。化繊ウール素材のものを選ぶと良いでしょう。ミドルレイヤを行動着として着た状態でもスムーズな動きができるように、フィット感や伸縮性なども重要な選択ポイントと言えます。
 基本的に、雪山では、ミドルレイヤーの着脱で保温力の調整を行います。行動している間に暑く感じてきたら、ミドルレイヤーを脱いで調節します。雪山ではできる限り汗をかかないように行動する必要があります。中には、薄手と中厚手のミドルレイヤーを2枚用意しておいて、調整するやり方をする人もいるようですが、行動中に頻繁に着脱をするようなことはないので、特別寒がりな人・特別寒い日でない限りは、基本的には中厚手のミドルレイヤー1枚で調整するので十分かと思います。

【コラム】ダウンジャケットについて(クリックして展開)

 ダウンジャケットについては、軽量、かつ、保温性・コンパクト性に優れているため、防寒着として持っていきますが、基本的に着たまま行動することはありません。ダウンは濡れに弱いので、汗をかく状態では着用しません。まれに非常に寒い中撤退するときなど、着たまま行動することはありますが、行動中は外側にアウターウェアを着るなどして、濡らさないように気を付けることが重要です。

【アウターシェル】

 一番外側に着る上着・パンツのことです。アウターシェルは①防風、防雪、防水の機能を担っています。本格的な雪山を登る場合には、ハードシェルと呼ばれる雪山用のアウターシェルが推奨されます。ただし、ハードシェルについては、かなり高価な買い物となります(グレード、ブランドにも寄りますが、mont-bellで上下を揃えても数万円かかります)。サークルで計画する初級の雪山については、まずはレインウェアでも参加可とします。

雪山用のハードシェル(上下)
【コラム】ハードシェルとレインウェアの違い(クリックして展開)

 雪山用のハードシェルとレインジャケットには、様々な違いがあります。その一つは、ハードシェルは、雪山で常に着たまま行動する事を想定した作りになっています。防水性・防風性ともにレインウェアよりも優れており、風の厳しい稜線でも長時間活動するのに向いています。また、耐久性・耐摩耗性に優れており、岩場で擦ったり、アイゼンやピッケルを引っかけても破れにくくなっています。さらに、表面が分厚く、ゴワゴワした作りになっており、雪の斜面で滑落した際に、雪と生地との間に摩擦を生んで滑り落ちる勢いを軽減する役割も持っています。

 厳冬期の八ヶ岳・アルプスなど、ピッケル・アイゼンを使うような本格的な雪山登山を目指す人は合わせて購入するようにしましょう。

 服装に関しては、人によって好みも分かれるので、一概にどのような組み合わせがベストとは言い難いですが、個人的には、メリノウール or 化繊の厚手のベースレイヤフリースハードシェルの組み合わせで、厳冬期の北アルプスなどの本格的な雪山まで登ることが多いです。体を冷やしたり、逆に暑くて汗をかかないように、状況に応じて着脱したりして、体温調節をしながら登ることがとても重要です。

2-2-3. グローブ

 グローブについても、基本的に「インナー+アウターのレイヤリングで使うことが多いです。個人的には、2レイヤーの方が操作性が優れていると考えていますが、冷え性・手汗が多いなど体質によっては、3レイヤーの方が良いと思います。体質に合わせて選択しましょう。グローブについては、自分に適しているものを見つけるまでに、結構買いなおしたりしがちな装備だったりします。

 本格雪山の場合は、ラッセル時に備えて、アウターには手首まで覆えるオーバーグローブを着用します。インナーには、メリノウール素材のものを選ぶと良いでしょう。インナーが手汗などで、濡れた時に備えて予備のインナーグローブを用意します。濡れたインナーについては、衣服の中に入れておけば、体温で乾燥して再び使えるようになります。また、アウターグローブには、グローブ用のリーシュコードを付けておくことをオススメします。風でとばされてロストするリスクを減らすことができます。
 レイヤリングの組み合わせとしては、中綿付きのオーバーグローブ+薄手のウールグローブ、または、中綿なしのオーバーグローブ+厚手のウールグローブという組み合わせもあります。

 初級の雪山の場合は、まずは防寒テムレスというかなり安価な作業用手袋でも良いでしょう。最近は登山用のモデルが売られており、こちらのモデルでは手袋の入口部分をドローコードで閉じて雪の侵入を防げるようになっており、ラッセル時でも使うことができるようになっています。防寒テムレスを使用する場合でも、中にはインナーグローブを着用することを推奨します。

防寒テムレス(雪山用、3Lサイズ)

※アウターグローブを購入する際の注意点としては、インナーを着用した状態でも重ね着できるように大きなサイズを購入するようにしましょう。特に防寒テムレスは一般的なサイズ感よりも1~2サイズ小さいと思っておいた方が良いです。普段Mサイズの手袋をしている方の場合は、”L” または “LL”サイズのテムレスを選択した方が良いです。サイズが小さすぎると、中綿がつぶれてしまい、十分に断熱機能が発揮されず、指先が冷えてしまう恐れがあります。

【コラム】防寒テムレスの限界(クリックして展開)

 防寒テムレスは長時間着用していても「手が蒸れない」から「テムレス」という名前が付けられています。しかしながら、テムレスはゴム製であり、通常の冬用のアウターグローブで使用されているゴアテックスと比較すると、透湿性は10倍程度劣ります(すなわち、10倍蒸れやすい)。特に手汗をかきやすい人は注意が必要でしょう。
 また、テムレスのメーカーは「マイナス60℃でも柔軟性を保証」していますが、防寒性については保証していません。寒さには個人差もありますが、厳冬期の赤岳などのマイナス20℃くらいの環境になると、テムレスでは寒く感じる人も多々いるようです。

 長時間の雪山登山や泊まりでの雪山登山を行う予定がある人は、ケチらずにゴアテックス製の雪山用のオーバーグローブを購入することをオススメします。一方で、防寒テムレスは防水性には優れているので、幕営時の整備、雪洞堀削、ラッセル時などで湿った雪に長時間触れることがあるときは、ゴアテックス製の手袋よりも向いていたりします。
※私は予備のグローブとして防寒テムレスを持っていき、行動中は基本的には雪山用のオーバーグローブを着用するなど使い分けています。

【コラム】ニトリル手袋の活用(クリックして展開)

 ホームセンターに売っているニトリル手袋を素手に取り付けて、その上からインナー手袋を装着する方法が最近雪山登山者の間で流行っています。この方法のメリットは、ニトリル手袋は透湿性は無いので、手袋内の手汗が外に漏れないため、インナー手袋を全く濡らさずに運用することができるという点です。ニトリル手袋内部は汗でびしょびしょに濡れてしまうのですが、ニトリル手袋の外側にインナーグローブ+アウターグローブを装着しているので、十分に外気から断熱されていて、手が冷えることはありません。
 下山後は手が汗でふやけてしまうのと、ゴムの匂いがついてしまって気になる、というデメリットはありますが、手汗でインナー手袋をすぐに濡らしてしまって困っている人は、試してみる価値はあるかもしれません。ただ、ニトリル手袋は破けやすいので、必ず予備のニトリル手袋を用意しておきましょう。

2-2-4. スパッツ(ゲイター)

 スパッツ(ゲイターとも呼ばれる)という足元に取り付ける装備も、雪山登山では必須です。主な役割としては、靴とパンツの間から、靴の中に雪が侵入することを防止します。スパッツは靴を着用した後で、靴の上から取り付けます。

 本格雪山で、12本爪、10本爪などの前爪のついたアイゼンを装備する場合は、必ずアルパイン用のスパッツを着用しましょう。アイゼンの爪で引っかけても破れにくく、丈夫な作りになっており、アウターパンツを保護することができます。

 初級雪山で、軽アイゼン、チェーンスパイクを装備する場合は、防水性さえあれば、アルパイン用でなくても構いません。最近ではワークマンなどでもスパッツが売っているようです。

2-2-5. 靴

 足の寒さの感じ方についても個人差があります。基本的に、スリーシーズン用のライトアルパインブーツでは、しっかりトレースのついた範囲までしか行けません。長時間、雪に足が埋まるような場所を歩く本格的な雪山では、断熱材の入った冬季登山靴が必要です(かなり高価ですが)。

 サークルで企画する行程の短い初級の雪山登山の場合は、まずはスリーシーズンの登山靴でも参加可とします。ただし、現地で行動しているうちに足が冷えてきたりした場合は、今後は冬用の登山靴を購入することを推奨します。スリーシーズンの靴といっても、足首まで覆われているハイカットで、ソールは堅めの靴の方が雪の上を歩くのに適しています。トレランシューズのような靴は雪山登山には適していません。4シーズン用の縦走靴などをお持ちの方はそちらを使いましょう。

雪山用の登山靴(断熱材入り)

2-2-6. 靴下

 靴下についても、ウール・化繊混紡中厚手~厚手の靴下を選ぶようにしましょう。小屋泊・テント泊などの泊まりでの山行の場合は、濡れた時に備えて必ず予備の靴下を携帯するようにしましょう。

2-3. その他の装備

2-3-1. サングラス(ゴーグル)

 サングラスは、雪山登山では必須装備です。雪山では雪面での照り返しと標高による紫外線増加により、平地の約2倍の紫外線を受けます。これにより、太陽光で網膜が焼けてしまう “雪目 (ゆきめ)”と呼ばれる症状を引き起こし、目が全く空けられないほどの痛みを伴うダメージを負ってしまうことがあります。太陽光が射している間はサングラスを着用しましょう。

 サングラスとゴーグルの違い・使い分けについては以下のコラムに記述しました。基本的にサークルで計画する初級の雪山登山に関しては、サングラスの方が適している場面の方が圧倒的に多いです。

【コラム】サングラスとゴーグルの使い分け(クリックして展開)

 サングラスとゴーグルの使い分けについてですが、風が強く、目が開けていられないような状況下では、ゴーグルを装着する必要が出てきます。ただ、ゴーグルを使用するような状況では、基本的に口元もバラクラバなどで覆う必要が出てきます。このような状態で長時間ゴーグルを装着していると、曇り止め処理がされているゴーグルでもしだいに曇ってきてしまいます。
 原則として、ゴーグルは悪天候などの状況下で撤退する際に装着するものと認識しておきましょう。普段の行動中はサングラスを着用するようにしましょう。

2-3-2. ストック+スノーバスケット

 夏山ではストックを使用しない人も多いと思いますが、雪山登山では必須級のアイテムです。滑落の危険が少ない場面では、バランス補助の杖として使います。また、スノーシューやワカンで歩くときには、必ずストックを両手に持ちたいところ。ラッセルの時にストックがないと体力の消耗度が何倍にも膨れ上がります。

 ストックに関しては、基本的に夏山で使用しているもので問題ありません。夏山で使用する際の違いは、先端に大き目のスノーバスケットを取り付ける点です。また、雪山でストックを使用する際は、先端のゴムキャップは外して使用します。

スノーバスケット(単品で数百円で売ってます)

2-3-3. アイゼン・軽アイゼン・チェーンスパイク

 急な雪の斜面を登るような本格的な雪山登山では、前爪つきの12本爪、10本爪のアイゼンが必要になってきます。サークルで計画する初級の雪山登山であれば、軽アイゼン(前爪はあってもなくても良い)チェーンスパイクで結構です。冬季に低山登山をする方であれば、チェーンスパイクの方が使い勝手が良いと思います。

 アイゼンを購入する際は、必ずお店に登山靴を持っていき、靴に合わせて買うようにしましょう。組み合わせが悪いとすぐに外れてしまったりすることがあります。チェーンスパイクの場合は、基本的にどんな登山靴でも合わせられるので、サイズが合っていれば良いです。

2-3-4. スマートフォン(GPS)、スマホ用のタッチペン

 雪山登山では、道が雪で覆われてしまうので、夏山以上に地形図を読んでルートファインディングする能力が求められます。必ず、地形図・地図をスマホにダウンロードし、携帯するようにしましょう。手袋をした状態でもスマホを操作するのにタッチペンを一緒に持っていくと便利かと思います。装着したままスマホを操作できる手袋も売られていますが、やはり操作性は若干悪いです。

2-4. ザックの中の持ち物

2-4-1. 日焼け止め、リップクリーム

 「2-3-1. サングラス」のところでも述べましたが、雪山は紫外線が非常に強いです。必ず事前に日焼け止めを塗っておき、また行動中も塗りなおせるように携帯するようにしましょう。晴れた雪山で紫外線を浴びたら、1~2日後には確実に日焼けの炎症となります。雪山では、日焼け止めは顔しか塗りませんが、耳の裏まで忘れずに塗りましょう。汗などで成分が流れにくいタイプの日焼け止めがオススメです。また、唇が日焼けで痛むのがつらい場合もあるので、リップクリームを塗って保護することもおすすめです。

2-4-2. 水筒(温かい飲み物)

 雪山でも水分補給は必要です。冷たい飲み物だと体を冷やしてしまうので、温かい飲み物を水筒で持参してくると良いでしょう。日帰り登山であれば、個人用で0.5Lくらいの容量があれば十分です(足りなくなった場合に備えて、温かい飲み物とは別に常温の飲み物もザックの中に入れておくと良いです)。最近は登山用のかなり軽量な水筒の製品も増えました。

2-4-3. 防寒着

 雪山登山では、風の吹かない樹林帯などでの行動中は温かいですが、停滞時はかなり冷え込みます。停滞時に着るための防寒着を必ず持っていきましょう。軽量かつコンパクトなダウンジャケットがオススメです。寒がりな人は、別のミドルウェアをもう一着持っていくと良いと思います。

2-4-4. エマージェンシーシート

 緊急時に使用します。行動不能になった時は体に巻いて、体温が奪われるのを防止しましょう。雪山だけでなく、夏山登山でも持っていくことをオススメします。

2-4-5. 予備の手袋、予備の靴下

 長時間の行動をするときは、インナー手袋が濡れてしまった時に備えて、必ず予備のインナー手袋を持っていきましょう。また、風の強い稜線上で行動する際は、アウターグローブが風に飛ばされてロストするリスクもあるので、予備のアウターグローブも持っていくことをオススメします。

 泊まりでの山行の場合は、予備の靴下も持っていきましょう。日帰り雪山登山の序盤で、渡渉などで靴下を濡らしてしまい、予備の靴下を持ち合わせていない場合は、その時点で詰みとなります。その場合は、即座に撤退しましょう。

2-4-6. その他

 これらの装備は、初級の雪山登山では必要となることは少ないと思いますが、一応紹介しておきます。

救急用具については、夏山と同様に必要となります。凍傷になった場合に備えて、パーティーの一人はガスバーナー、コッヘルなどを持参して、お湯を沸かせられるようにしておくとさらに良いと思います。

長時間の行動、悪天候での行動をする場合は、ビバーク用具としてツェルトを持参しましょう(シュラフ+カバーもあると良いが、荷物は重くなる)。雪洞を掘ってツェルトに包まっていれば、寒くて眠れないかもしれませんが、1日くらいは耐えられるかもしれません。

雪崩リスクのあるような山に行く場合は、雪崩対策用具(ビーコン、ショベル、プローブ)を持っていきましょう。ビーコンについてはメンバー全員が持っておき、正しく使える状態になっておく必要があります。事前に訓練しておきましょう。他パーティーが雪崩に巻き込まれた場合に救助するのにも役立てることができます。

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